氏名 : 橋本 翔多 (281567148)
所属 : 笹井研
題目 : KaiC一分子モデルによるリン酸化振動とATP加水分解活性の相関の発生メカニズム
概要 :
概日振動とはほとんどすべての生物に見られる約24時間周期の内因性のリズムで
ある。Nakajimaらにより、シアノバクテリアの3つの時計タンパク質KaiA, KaiB,
KaiCとATPを試験管内で混合することで、リン酸化したKaiCの割合が約24時間周
期で概日振動することが明らかになった。さらにTerauchiらにより、KaiA, KaiB
非存在下でのKaiCのATPase活性が、KaiA, KaiB存在下でのKaiCのリン酸化振動数
と相関することが示された。前者の実験結果を受けて、遺伝子の転写・翻訳に依
存しないKaiCのリン酸化振動発生のメカニズムを説明するモデルはいくつか提案
されたが、後者の実験結果であるKaiCのATPase活性とリン酸化振動数の相関を生
むメカニズムは現時点で明らかになっていない。
われわれは、KaiCのN末端
側のC1ドメインとC末端側のC2ドメインが構造変化を介してコミュニケーション
をとることが、この相関関係に果たす役割を調べるために、KaiC一分子モデルを
計算機上に構築し、Gillespieアルゴリズムを用いた確率シミュレーションを
行っている。本発表では、多様な仮定のモデルによる計算結果の比較により、
KaiC一分子のリン酸化レベル振動数とATPase活性が相関するために必要な条件を
明らかにするとともに、温度補償性のメカニズムについても議論する。
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