脊椎や大動脈の手術においては,脊髄中の神経を損傷し麻痺を生じるリスクがあるため,
運動機能モニタリングを実施することにより防止に努めている.
現行では,頭部を電気刺激して末梢の筋電図を記録する運動誘発電位(MotorEvokedPotential: MEP)
とよばれる電位波形の振幅値を使用しているが,麻酔深度等の影響により
運動機能は温存されているにも関わらず振幅値が低下する偽陽性を生じやすいという問題があ る.
これを改善するため,現在,医学部と共同で,生体計測データを用いて運動機能指標を補正し,
モニタリングの精度向上を試みる臨床研究を行っている.
しかし,手術中の時系列データ解析に関する研究事例は少なく,一般的な解析手法は確立していない.
そこで本研究では,実際の臨床研究を通じて,課題の解決,モデル関数の選択,
予測精度や計算量の改善など,医用時系列データに適した解析手法の提案を目指している.
現時点ではデータ収集を開始して間もない状況にあるが,本発表では,一部のデータに適用した
筋弛緩薬とMEP振幅比の解析事例について述べる.また,生体の薬物動態モデルや,
不良データの除去あるいは年齢による代謝機能の低下など個人差などの考慮事項についても紹介する.