近年,世界的な高齢化の進行に伴い,認知症患者が増加している.
現在,投薬治療などによって認知症の進行を遅らせることなどは可能であるが,
基本的な治療は難しいとされており,より早期に発見して症状の進行を遅延させることが重要である.
本研究では事象関連電位と呼ばれる脳波の一種である,P300に注目した.
P300は複数の刺激(例:高音と低音のビープ音)を呈示したとき,
低頻度の刺激が呈示されたときに観測される脳波で,被験者の認知機能を反映しているといわれている.
P300の特徴量のひとつに,刺激呈示から振幅のピークまでの時間として定義される頂点潜時があり,
課題の難易度や被験者の年齢により,延長することが過去の研究から知られている.
本研究では,認知症の早期発見を最終目標とし,その第一段階として,
異なる年代の被験者に複数の課題を用いた実験を行い,頂点潜時の延び方が変化する課題の存在と,
課題の難易度と年齢によるP300の頂点潜時の振舞い違いを確認した.
また,課題の捉え方でP300の頂点潜時が大きくばらつくことを確認し,
認知症患者で行うべき実験の指針を得た.