昆虫や鳥などの動物は、自ら羽ばたくことによって渦を発生させ、その渦 と自分自身の羽との相互作用を利用して、推進や方向転換を効率的に行っている ことが知られている。また、カエデなどの植物の種は羽をもち、回転をしながら ゆっくり落下するが、その際、羽のまわりに発生する渦を維持することにより、 揚力を効率的に獲得していることが知られている。
近年、これらの動植物の羽のまわりには、前縁渦と呼ばれる共通の渦が発 生していることが実験や数値計算により明らかになってきた。しかし、前縁渦の 発生と維持機構における物体と渦の相互作用については十分な理解が得られてい ない。
そこで、本研究では物体の運動による渦と物体の相互作用を理解するため に、回転しながら落下する種のまわりの流れの数値シミュレーションを行い、実 験では困難である詳細な解析と可視化及び様々な数値実験を実施する。
計算手法は、VolumePenalization法(VP法)を用いる。VP法は計算格子と して物体適合格子ではなく構造格子を用いた手法であり、物体形状の変更が容易 であり、実装も容易である。本研究ではまずVP法での実装を行い、計算結果の妥 当性を検証したのち、VP法の特性を生かして、種の形を変えながら形状による渦 構造の影響について調べる。