本研究では、高精細3次元CT像からの肺気腫病変の自動抽出、ならびに肺野内に おける分布状況の定量的評価手法について述べる。
慢性閉塞性肺疾患の一種である肺気腫は、近年の高齢化社会の進展および高い喫 煙率を背景に増加傾向にあり、今後さらに増えることが予想されている。 そのため早期の診断、治療が求められている。一方、近年マルチスライスCTの 登場により高精細な3次元画像が得られるようになってきた。しかしながら、 これまで肺気腫の計算機診断は、CT像における低吸収領域(LAA)を2次元処理に より抽出・評価する研究がほとんであり、3次元に言及したものはほとんどな い。そのため、3次元画像の有用性を生かした3次元処理による診断支援が必要 とされている。
そこで本研究では、3次元画像処理による気腫性肺疾患の計算 機診断支援の検討を行った。まず、領域拡張法により気腫性病変の抽出を行う。 さらに、ユークリッド距離変換を用い、既存の肺血管や気管支から一定の距離 にどの程度病変が存在するか、どれだけ病変が集中しているかを調査する。
本手法を実際の3次元X線CT像に適用したところ、病変が良好に抽出される ことを確認した。