近年,進化的計算手法を用いてロボットの制御器を構築する,進化ロボティクスの研 究が注目されている.進化ロボティクスでは,従来のトップダウン的な制御器の構築 手法と異なり,ロボットの身体性や環境との相互作用を反映したボトムアップ的な制 御器の構築が可能である.
しかしながら,進化開始時に評価値を得ることができないような複雑なタスクにおい ては,淘汰圧がかからないために,進化が適切に進行することは非常に困難となる. この問題を解消する方法をして,段階的進化の概念が提唱されている.段階的進化と は,初期段階からタスクと評価関数を徐々に複雑化していくことにより,進化の停滞 を防ぐアプローチである.ここで,ニューラルネットワークを用いた制御器の段階的 進化を試みる際,従来のシナプス荷重を進化の対象とする手法では,ネットワークの 構造が一義的かつ固定的となり,過去の段階において獲得された機能が,以後の進化 によって容易に破壊されてしまうという問題が生じる.
そこで,本研究では,進化における可塑性と安定性のバランスを保つことが重要であ るという観点から,生物の神経系に観察される動的再編成機能に注目し,状況に応じ て適切な機能を発現することが可能な多義・多型的ニューラルネットワークを提案す る.