本研究は回転磁石マーカによって生じる磁場を利用し, スマートフォンの3次元位置を推定する手法を検討したものである. 回転磁石マーカとは, 磁石を一定速度で回転させるための装置である. スマートフォンの磁気センサの計測データを用いて, 回転磁石マーカからの距離, 方位角, 仰角を推定する.
方位角の推定は, 磁石がスマートフォンの方向を向いている時に磁場のノルムが最大になることを利用する. 仰角の推定は, まず回転磁石が発生させる磁場と仰角との関係式を導出し, 次に計測された磁気センサの値をその式に代入することで仰角を算出する.
提案精度を調べるために実験を行った. 回転磁石マーカとスマートフォンとの距離を1mで固定し, 方位角が0゜〜180゜を45゜刻み, 仰角が-60゜〜60゜を30゜刻みの位置で計測した.
実験の結果, 方位角は最大誤差11゜, 標準偏差6゜, 仰角は最大誤差10゜, 標準偏差10゜の精度で計測が可能であった.
今後の課題として, 今回の手法では方位角と仰角が2つずつ推定されてしまうため, その問題を解決する必要があること. 距離の推定手法の検討などが挙げられる.