近年,神経科学の目覚しい発達により,EEG(脳波)やfMRI(核磁気共鳴計 測)といった脳活動の記録技術や診断装置の発展とともにさまざまな脳の機能が 解明されてきている.さらに最近では,神経科学の知見から非侵襲的脳機能計測 法を市場調査へ適用するニューロマーケティングが注目を浴びている.これは消 費者の感情や感性を解明し,マーケティングに応用しようという試みである.
生体信号は非一意性を有する信号であり,特に脳波はS/N比の低さも作用し てその特徴を捉えるのは困難である.例えば,想起時や視覚刺激時,聴覚刺激時 といった各々の場面で全く異なる特徴を表出する.そのため,基礎検討として感 情を喚起させやすい視覚刺激に着目する.視覚刺激に関する脳波と感情の関係に 関する先行研究において,感情を喚起する画像データセット IAPS(International Affective Picture System)を用いることにより,事象関 連電位の一種であるLate Positive Potentials(LPP)が誘発されることが報告 されている.
そこで本研究では,IAPSを用いて誘発させた脳波LPPを用いて感情の推定を 試みた.その結果,脳波LPPは喚起された感情に寄与しており,加算平均処理に よりLPPを明確化することで推定精度が向上することを示した.