1998年度 計算理工学セミナー



☆ 第6回計算理工学セミナー
日時:5月11日(月)17:00〜18:30
場所:8号館北館102講義室
講師:川勝 年洋 助教授
題目:複雑液体研究における計算機シミュレーション
内容:
 複雑液体は、ミクロ(原子・分子のスケール)とマクロ(連続体とみなせる
スケール)の中間のいわゆるメソスケールにおける特徴的な時間・空間スケー
ルの構造や運動をともなう流体の総称で、代表的な例としては、高分子液体や
エマルジョンなどを挙げることができます。このような流体においては、低分
子からなる単純液体では見られない非線形非マルコフ的な挙動が見られます。
このような特徴を生かして、複雑液体は、化粧品や洗剤、プラスチック、接着
剤などの日用品から、液晶パネルのような高機能材料まで幅広く利用されてい
ます。
 複雑液体を特徴づけているメソスケールの現象は、ミクロなスケールからは
遥かに隔たった時間・空間スケールでの多数の自由度の相互作用によって生じ
るため、系の構成分子1つ1つの運動に注目したミクロなアプローチでは、そ
の特徴をうまく捉えることは難しく、統計力学的な方法を用いた自由度の逓減
と計算機シミュレーションによる解析が重要になります。
 本講演では、高分子の相分離現象および高分子粘弾性などの複雑液体のいく
つかの例について、そのようなモデル化とシミュレーションの実例を紹介する
と共に、将来の複雑液体研究におけるシミュレーション利用の方向について考
えてみたいと思います。

☆ 第5回計算理工学セミナー
日時:4月27日(月)17:00〜18:30
場所:8号館北館102講義室
講師:須田 礼仁 講師

題目:
大規模疎行列連立一次方程式のハイパフォーマンスコンピューティング

内容:
ハイパフォーマンスコンピューティング (High Performance Computing, HPC) とは
、計算機の性能を最大限に引き出すことを目的とする広範囲な研究分野を指す言葉で
す。その中には、計算機そのものの構成から、コンパイラやライブラリといったシス
テムソフトウェアの最適化、アルゴリズムの設計、プログラミング技術、性能評価や
新しい計算機の性能を活かした新しいアプリケーションの開発などが含まれます。
我々は特に科学技術計算における HPC を研究をしています。そのなかから本講演で
は、大規模で疎な行列を係数とする連立一次方程式の解法 (線形解法) の HPC につ
いてお話しします。科学技術計算においては、線形解法の計算速度がプログラム全体
の計算速度を決定するようなこともよくあり、高速な線形解法は HPC において非常
に重要な研究テーマのひとつです。
しかし線形解法にはあらゆる問題に対して最適な決定版というものはなく、解くべき
問題によって適した解法が異なり、誤った選択をすると性能が数十倍も異なることが
あります。しかも各種の技法を駆使することにより性能が向上する場合も多く、研究
も職人芸(おたく?)的なものになりがちです。本講演では、線形解法のそういう面
を隠すことはあえてしませんが、一般の方にも御理解いただけるような説明を試みま
す。

☆ 第4回計算理工学セミナー
日時:4月13日(月)17:00〜18:30
場所:8号館北館102講義室
講師:外山 勝彦 助教授
題目:非単調論理に基づく知識の表現と利用
内容:
知識の表現と利用の手法を確立することは、人工知能の実現において基本的かつ重要
な問題です。論理を用いた手法は形式的手法のひとつであり、表現形式(構文)やそ
の意味を明確に与えること、決定手続き(推論手続き)を開発することなどの点で優
れています。
古来、命題論理、1階述語論理などの古典論理がよく扱われてきましたが、人間がも
つさまざまな知識や人間がしばしば行う推論を形式化するためには、表現力は不足し
ています。たとえば、例外のある規則や事象の因果関係を表すときには、それらの論
理では一般に困難です。それを解決するためには、非古典論理と呼ばれる2階述語論
理や様相論理などを用いる手法もありますが、それらをさらに拡張した非単調論理と
呼ばれるいくつかの論理が提案されています。
本講演では、いくつかの基本的な非単調論理を紹介し、常識を用いた推論を形式化す
る手法について述べた後、さらに、従来の非単調論理の問題点とそれに対するひとつ
の解決策、非単調論理と人工知能の他のテーマとの関連などを示します。

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